怪盗・長手の伊佐
どんな伝承か
長手の伊佐は村人から義賊として親しまれた怪盗で、盗んだものを貧しい人々にこっそり分けてやったという。子どもの頃はやんちゃで、父が懲らしめようと酒造りの空桶に入れて倉の錠をおろしたが、三日目に父が覗くと、桶のふちに帯を伸ばして結び目を引っかけ、するすると登ってきたので驚いたという。奉公に出てからは、他の者が寝静まると起き出して山を越え白石まで走り、大旦那の倉に入って盗み、翌朝は何くわぬ顔で田に出たものだった。後家の家に入ったときは膳を二人分そろえられて見破られ、以後は村の中で盗みを働かなくなった。最後は隣村の船坂新兵衛と約束した夜に一人で出かけ、待ち構えた役人のわなにはまって捕らわれたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
米沢市史 民俗編――伝説(米沢市(編)・米沢市史)
『米沢市史 民俗編――伝説』は、米沢市が編んだ市史の民俗編から、第八章「口承文芸」第三節「伝説」を収めたものである。狐・河童・蛇にまつわる話、上杉家の家臣や弘法大師・源義経にちなむ話、沢・池・岩の由来、地蔵や不動尊の霊験、温泉の開湯譚、長者屋敷など、米沢とその周辺に伝わる伝説を一話ずつ短くまとめて載せる。全体を「鳥獣・草木」「人霊」「山・川・湖沼」「地蔵・社寺」「温泉・町・村」の五項に分け、遠山と田沢の七不思議も列挙する。