苦しまず逝けるという石木戸の水
どんな伝承か
米沢市関根の普門院の薬師如来の奥の院は、後背の山を一つ越した南原地区の石木戸にあり、錦堂とも西城戸とも呼ばれる。春五月七日、秋九月七日が奥の院の祭り日で、その日の夕方に薬師は普門院から奥の院へ遷り、翌八日の夕方に再び還るとされる。この奥の院の薬師堂がある山麓にはたいそうきれいな清水があり、石木戸の水として知られる。この水を飲めば、よくなれる病人なら回復が早まり、治る見込みのない病人なら苦しまずに死ねるといわれ、遠方からも汲みに来たという。米沢市築沢あたりではこの水を病人の患部に垂らし、おみたらせと呼んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
置賜の庶民生活2(民間信仰)――俗信・ワカ・死霊(置賜民俗学会ほか・置賜の庶民生活)
『置賜の庶民生活2(民間信仰)――俗信・ワカ・死霊』は、置賜地方の民間信仰を、奥村幸雄・武田正らが項目ごとに分担して書いた民俗誌である。人の一生や食物・病気の禁忌、天気占い・作占い・予兆とまじない、ワカ(巫女)、病を治す薬師・道祖神・地蔵、死霊と魂招び・死水の習俗を、古老からの聞き書きや薬の書付を交えて記す。「禁忌・卜占・予兆」「生活の中の神々」「死霊」などの部に分け、項の末尾に執筆者名を記す。