歯形を柱に釘で打つ伝方書
どんな伝承か
虫歯は庶民の生活の中で居ても立ってもおれない病の一つで、杉の板を絵馬型に切り「おきの国あごなし地蔵尊に口中一切のこと祈願せば、たちどころに平癒せざるなし」と墨で書いて、峠の木の枝に吊るす風習があった。孔あき銭を上がり口の板に打ちつけ、客が来るたびに踏んでもらうと治るともいう。それでも治らないときは梅干を虫歯にはさんで神経をやわらげた。飯豊町新沼の渡部正義家に残る家伝の「伝方書」には、「蛇蛇及蝮蝦」の五字を紙に書き、その字が折り目にならぬように折って痛む歯で食わえ、歯の跡のついた所を南向きにして柱に釘で打ちつけておくとよい、と記されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
置賜の庶民生活2(民間信仰)――俗信・ワカ・死霊(置賜民俗学会ほか・置賜の庶民生活)
『置賜の庶民生活2(民間信仰)――俗信・ワカ・死霊』は、置賜地方の民間信仰を、奥村幸雄・武田正らが項目ごとに分担して書いた民俗誌である。人の一生や食物・病気の禁忌、天気占い・作占い・予兆とまじない、ワカ(巫女)、病を治す薬師・道祖神・地蔵、死霊と魂招び・死水の習俗を、古老からの聞き書きや薬の書付を交えて記す。「禁忌・卜占・予兆」「生活の中の神々」「死霊」などの部に分け、項の末尾に執筆者名を記す。