鎗を忘れた男と弥三郎婆
どんな伝承か
孫助という男が川魚を獲りに山へ入ったとき、谷川で鎗を研いでいる一人の男に出会った。素姓の知れないその男と知り合いになり、以後、彼はたびたび孫助の家を訪れるようになる。奇妙なことに、便所に行くときも風呂に入るときも、男は決して鎗を手放さなかった。ところがある日、男は庭先に鎗を忘れて帰ってしまう。孫助が訪ねて行くと、男は寝込んでいた。男が言うには、鎗を忘れて帰った夜、形相の凄まじい白髪の老婆がやって来て、「弥彦山の弥三郎婆を忘れたか」となじり寄られ、そのとき以来具合いが悪いのだという。そう言い置いて、男は息を引き取ったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。