池の主から機を借りた老婆
どんな伝承か
加茂野の市橋にある徳雲寺の前には、いまは埋め立てられたが小さな池があった。ほとりに弁天が祀られ、池の底は龍宮に通じるといわれていた。昔、村の老婆が、女たちの多くが機を織るのを見て自分も織りたくなり、池のほとりで機がほしいと思わずつぶやいた。すると池の中から、三日たったら必ず返すなら貸してやろうという声がして、底から機が浮かび上がってきた。老婆は喜んで持ち帰り三日間夢中で織ったが、返す日になると惜しくなり、夜まで織りつづけた。すると機はふいに宙へ浮き、織りかけの布をつけたまま空を飛んで池に落ち、沈んでしまった。いくら頼んでも二度と浮かんでこず、それからこの池をはたご池と呼ぶようになったという。
原典より
もう一日ぐらいはよかろうと、日が暮れ夜が来ても、そのまま織りつづけていると、突然ハタゴが空中にうき上がり、織りかけの布をつけたまま空を飛び、池の中へ落ちて沈んでいってしまった。—— 美濃加茂市史 民俗編――伝説(美濃加茂市(編)・美濃加茂市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
美濃加茂市史 民俗編――伝説(美濃加茂市(編)・美濃加茂市史)
『美濃加茂市史 民俗編――伝説』は、美濃加茂市の市史民俗編のうち、第一三章「俗信」と、第一四章「伝説 昔話 世間話」の総説および第二節「伝説」を収めたものである。天候・農事・人事にかかわることわざと俗信、民間療法、樹木の禁忌を挙げたうえで、伊深・蜂屋・太田・三和など市内各地区に伝わる三度栗、龍宮さまの淵、火塚、山男、かぶと淵などの伝説六十四話を記す。昔話・世間話の節は含まず、伝説の多くは題に伝承地区の名を添える。