十五夜の餅を取り損ねた兎
どんな伝承か
昔、ある所に欲の深い兎とやさしい蟹がいた。十五夜の晩、良い晩だから高い山で餅を搗いて食おうということになり、二人で一生懸命に餅を搗いた。ところが兎は餅を独り占めしようと考え、臼を高い山から転がして、先に着いたほうが食おうと言い出す。臼の尻について谷底まで跳んでいった兎が中をのぞくと臼は空で、途中で落ちた餅は坂の半ばで蟹が拾って食べていた。兎は羨ましがったが、蟹は「どちらから食おうとお構いなさるな」と言って食べ、欲の深い兎はとうとう餅を食えなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
船引町史 民俗編――昔話と伝説(船引町(編)・船引町史)
『船引町史 民俗編――昔話と伝説』は、船引町が編んだ町史民俗編のうち、第十一章「昔話と伝説」を収めたものである。昭和五十三年春から町内を回って集めた昔話を話者の名を添えて土地の言葉のまま載せ、坂上田村麻呂や安倍貞任にまつわる地名・社寺の由来など町内の伝説を併せて記す。第一節では語り収めの句、葉煙草ののし作業を語りの座とした伝承の環境、語り手の系譜を論じ、第二節では伝説を自然・歴史・宗教の三つに分けて紹介する。