赤地蔵で狐に化かされた牛方
どんな伝承か
和田に藤吉という牛方がいた。明治二十年頃、毎日三頭の牛に薪や炭を付けて糠野目へ運び、帰りは塩や米を積んで戻っていた。ある夏の日、糠野目からの帰りに居酒屋で一杯機嫌となり、入生田の赤地蔵のあたりにさしかかった。十五夜の月が照っていたのに、地蔵の前へ来ると急に真っ暗になり、いつもの道さえわからなくなった。やがて我が家に着いた気になり、牛を小屋に入れて風呂に入っていた。その頃、露藤村の某が赤地蔵のあたりを通るとやはり闇に包まれ、大きな怪物が現れた。恐る恐る戻ると牛が三頭おり、橋の下で水を浴びている男がいる。狐に化かされていると教えて引き上げると闇は消え、月が冴え渡っていた。男は藤吉であった。
原典より
和田に藤吉さんという牛方がおりました。—— 高畠町伝説集(山形県立高畠高等学校文芸班(編)・1957年(昭和32年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高畠町伝説集(山形県立高畠高等学校文芸班(編)・1957年(昭和32年))
『高畠町伝説集』は、山形県立高畠高等学校文芸班が熊木成夫教諭の指導で編み、昭和三十二年に高畠町伝説集刊行会から発行した伝説集である。高畠町とその周辺に伝わる社寺の縁起、人物、怪異、動物、地名の由来などを、古老からの聞き書きと古記録から採り、内容の多くは郷土研究家安部名平次の蒐集による。神仏・人物・怪異・動物・什物・地物・地名・地誌の八篇に分け、町長の序と校長・安部名平次・武田好吉の文、編者の後記を付す。