便所の神がくれた三枚の御札
どんな伝承か
昔、寺の小僧が和尚に言いつけられて盆花を採りに山へ入り、夢中になるうちに日が暮れて道に迷った。明かりを頼りに小屋を訪ねると老婆が泊めてくれたが、夜更けに隣の部屋で長刀を研いでいる。便所へ立った小僧は便所の神から御札を三枚もらい、早く逃げよと教えられる。追ってくる婆に、大藪になれ、大火事になれ、大川になれと御札を投げて逃げ、ようやく寺へ帰り着いた。婆は井戸に映った小僧の影を追って飛び込み溺れ死に、井戸を払って見ると正体は古ムジナであったという。
原典より
昔、むかぁし、ある所にお寺があって、和尚さんと小僧が一人いだど。—— 船引町史 民俗編――昔話と伝説(船引町(編)・船引町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
船引町史 民俗編――昔話と伝説(船引町(編)・船引町史)
『船引町史 民俗編――昔話と伝説』は、船引町が編んだ町史民俗編のうち、第十一章「昔話と伝説」を収めたものである。昭和五十三年春から町内を回って集めた昔話を話者の名を添えて土地の言葉のまま載せ、坂上田村麻呂や安倍貞任にまつわる地名・社寺の由来など町内の伝説を併せて記す。第一節では語り収めの句、葉煙草ののし作業を語りの座とした伝承の環境、語り手の系譜を論じ、第二節では伝説を自然・歴史・宗教の三つに分けて紹介する。