病魔を退けた宝泉院の大般若経
どんな伝承か
笠石宿の宝泉院に伝わる大般若経は、今から百三十年ほど前、小貫喜左右衛門が七十三両二分を出して、大和の万福寺の鉄眼和尚の黄檗版を買い求めたものである。六十年に一度、虫干しを兼ねて取り出し、近くの天台宗の僧を頼んで転読してもらっている。惜しいことにこの経は二十巻ほどが欠けている。かつてこの寺が長く無住であった頃、重い病にかかった者がこの経を借りて枕元に置くと、たちまち病魔が退散して平癒したという言い伝えがあり、無断で借り出したまま返さなかった者がいるのではないか、あるいは借りた経が笠石の大火で焼け失せたのではないかと、住持の寂舟和尚が語ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
鏡石町史 第4巻 民俗編
『鏡石町史 第4巻 民俗編』は、鏡石町の町史のうち民俗を扱う巻である。第十一章「昔話と伝説」では、笠石・細谷・成田・久来石などのムラに伝わる木や坂・峠・祠堂・石にまつわる伝説を集め、伐ろうとした者が病んだ愛宕様の楓、鼻取り地蔵、和田平太胤長の妻にちなむ化粧が原などの由来を記す。伝説は木の部・坂峠山の部・由来譚・祠堂の部・石岩の部に分けて番号を付し、各話の末尾に話者名か『白河風土記』などの典拠を添える。