戸隠山に棲むと伝わる紅葉狩の鬼女
どんな伝承か
長野の市街からバスの通う戸隠山も、山また山を越えた奥にある。そこには目を奪うほど美しい姫が住んでいたが、その正体は鬼女だったという伝えがあり、謡曲の紅葉狩によって広く知られてきた。古い人々は海のかなたに常世の国があると信じ、時代が下ると同じ理想の国を山の奥深くに求めるようになったという。戸隠山もまた、そうした異郷のひとつと考えられていたのだろう。鬼の岩屋や大江山の酒天童子の話も同じ流れにあり、異郷を思う民族の心理が数々の伝説を生んできたと本書は説いている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。