深い淵に住むと伝わる乙姫
どんな伝承か
浦島太郎の故郷と称する土地は、風土記に記された丹後の日置の里や筒井村にはかぎらなかった。香川県三豊郡詫間町箱浦には三十二代目の子孫と称する人があり、群馬県佐波郡宮郷村の竜宮部落には阿感坊という浦島子が伝わって、竜宮から持ち帰ったという玉手箱まで残る。海上安全の守護神としての竜宮神社は北海道の小樽市にもあり、竜宮祭という名だけならば福岡・和歌山・鳥取にもある。福島県河沼郡の、虚空蔵さまで名高い柳津村を流れる只見川の深淵にも竜宮があったといい、その乙姫が虚空蔵さまの宝物の珠玉を欲しがってしきりにねだったという話も伝えられている。金殿玉楼に住むはずの乙姫も、会津ではかなり貧しげである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語・昭和(民俗))
関敬吾編『日本人物語5―秘められた世界』。日本の生活文化に潜む秘密・境界・異界・怪異を主題別に集成する。