越後高田に降った紅色の雪
どんな伝承か
佐藤成裕の『中陵漫録』は、文化六年に紅雪の降ったことを次のように記す。文化六年の冬、越後の高田のあたりに紅色の雪が降った。春になっても往々降ることがあり、昔もこの紅雪が降ったことがあると土地の老翁が言い伝えていた。この異変を聞く者は大いに驚き、天変のように恐れをなした。しかしこの理由をつきつめれば恐れるにはあたらない。自分は先年羽州にあって吾妻山の絶頂に登ったが、山上半里ばかりの間はみな赤土で、大いに崩れて所々に水が溜まり、池のようになってその水はみな赤かった。時に竜がこの水に下って汲み、百里の外に降らせる。その雨は淡赤で、空中で凝って雪となれば紅色の雪になるのだ、と。
原典より
文化六年の冬、越後の高田のあたりに紅色の雪降る。—— 日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。