他家の体を借りて蘇った男
どんな伝承か
気仙のある家の息子が、墓場で葬礼の鉢鉦が鳴らされているとき棺の中で蘇生した。家に連れ帰ると、数日前まで暮らしていた家のことを何も覚えておらず、ここは自分の家ではない、気仙の某村のこういう家だから早く帰りたいと言い張る。その家に問い合わせると、ちょうど同じ日に息子の火葬をすませたという。訪ねて来た者には見知らぬ若者だったが、息子は相手の家族の名や年、仏壇の下の書きつけまで言い当てた。火葬で体を失ったので、土葬のままだったこの家の息子の体を借りたのだと語ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。