御所山に現れた毛むくじゃらの大男
どんな伝承か
山形・宮城両県の境には標高千五百メートル級の連山が重なり、一番深いところに御所山がそびえている。明治二十年、山形県東根市の太田鉄五郎という人が、温泉の湯脈を求めて毎朝山に登り、白滝に打たれて水ごりを取り祈願をこめた。満願の日、滝へ降りようとすると、朝もやの立ちこめた滝つぼのわきに何者かがいた。身長二メートルあまり、頭髪は肩をすっぽり隠して地上に届くばかりで、朝日にくっきりと浮かび上がった。太田は山の神様だと手を合わせ、転げるように山を降りた。大正の初めには同市の太田利八が道の上に大きな足跡を見つけ、たどると、木の皮で作ったようなミノをまとった人とも猿ともつかぬ大男が穂を摘んでいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。