水沢を中心に広がった隠し念仏
どんな伝承か
東北の仏教徒の一部は、宝暦四年から昭和六年にいたる度重なる干渉と弾圧を受けながら、寺方とはまったく別種の秘密宗教結社の形をとるようになった。高橋梵仙の『かくし念仏考』によれば、信者の分布は岩手・宮城の両県全域に広がり、北海道・青森・秋田・山形・福島にも及ぶ。この隠し念仏が東北に伝わったのは江戸中期で、京都の鍵屋宇兵衛によって岩手県水沢市を中心とした一帯に広められ、ここが中心地であった。一般には浄土真宗の転化と考えられるが、真の目的は真言秘密の念仏による即身成仏にあったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。