報恩講帰りの老人を化かした白狐
どんな伝承か
昔、練兵場のあった琵琶山一帯は森や林、沼地があり、山腹には洞穴もあって、狐や狸がすむ物騒な所だった。練兵場には大きな白狐が一匹いて、ときどき人を化かしたという。ある秋、近所の老人が吉江の西光寺の報恩講に参り、夜遅く提灯をともして練兵場を横切る道を帰ってきた。畑の中の道にさしかかると風もないのに提灯が消え、気づけば着物の裾をからげて川の中を歩いていた。いくら進んでも川の中である。夜が明けて、主人が戻らないのに気づいた職人が外を見ると、老人がそば畑を行ったり来たりしており、積みわらの陰で白狐が尾を振っていた。職人が大声で呼ぶと狐は逃げ去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
鯖江市史 史料編 第1巻(民俗編)――伝説(鯖江市(編)・鯖江市史)
『鯖江市史 史料編 第1巻(民俗編)――伝説』は、福井県鯖江市の市史のうち、史料編第一巻の民俗編にあたる巻である。市内の各町に伝わる伝説を、町名を添えて収め、泰澄・親鸞・弁慶にまつわる木や岩、山姥やてんぐ、たたりのある一本杉、地名の由来を記す古文書の写しなどを載せる。自然物・岩石・動物・家屋敷・城跡・道・橋・寺院・塚墓・人物・事件の項に分け、後半には昔話・笑い話・果なし話と田植え唄などの民謡を置く。