折居婆さんと鰊の群来
どんな伝承か
江差の津花に、神の化身のような老女が一人で暮らしていた。折居婆さんと呼ばれ、朝夕に三柱の神を拝み、天候を言い当てては里人に告げるので、人々は神として敬った。子供好きで毎日一緒に遊んでいたが、ある日ぱたりと来なくなる。町へ出てみると、江差では魚が一匹も獲れず、皆が沈んでいた。婆は家に戻って灯明をあげ、豊漁を祈る。その夜、鷗島の方に紫の火が燃えるので渡ってみると、日ごろ信じる老いた神がいて、瓶子を授け、身を清めてこれを海に投じよ、さらば小魚の群来を見るだろうと教えた。教えのとおり海へ水を注ぐと魚の大群が押し寄せ、里人は飢えを免れた。婆の姿はそれきり消えたという。
原典より
昔江差町の津花の地に名を折居婆さんと呼ぶ神の化身の如き老女が一人ぼっちで暮してゐた。—— 日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。