巻物を奪われた娘が化した岩
どんな伝承か
弁慶と義経が今の弁慶岬で角力などして暮らすうち、一人のアイヌの娘が立派な巻物を持っていることが知れた。義経は隙あらば手に入れようと二年ほど娘を贔屓にし、ついに巻物を奪って立ち去る。娘は悔しさのあまり、一漕ぎで三里も走るという宝船で追ったが、刀掛けの岩のある今の雷電岬を過ぎても追いつけず、ついに神威岬の沖で船を沈めて海へ入った。その一念が岩となって現れたのだといい、烏帽子をかぶり衣を着た姿にそっくりだという。女が通れば海が大時化になるとして通行を許さず、船乗りも帆を下ろして通った。後に鉄砲を撃たれて魂が抜け、津軽へ飛んで行ったとも伝える。
原典より
弁慶とそれから義経様が、今の弁慶岬で角力を取ったりして暮らしているうちに、一人のアイヌのメノコ(娘)が立派な巻物を持っていることが分かりました。—— 日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。