有耶無耶の関の鬼手長足長
どんな伝承か
昔、人びとは関の下居堂から奈曽川にそって上り、小滝から蔵王権現を通って山形県飽海郡へ抜ける道を通っていた。途中の杉森は枝が重なって昼も暗く、奥には鬼が住んで旅人を苦しめた。鬼は鳥海山と沖の飛島に足を置き、関の浜辺の道を通る人をつかまえて食べたという。手足が十里も二十里も伸びるので、どんなに逃げてもつかまった。人びとはこれを手長足長と呼んで恐れた。道の入口には三本足のカラスが飛んできて、鬼がいれば有耶、いなければ無耶と鳴いたので、旅人は無耶と鳴く日を待って通り、このあたりを有耶無耶の関と呼ぶようになった。のちに慈覚大師が大護摩壇を築いて祈り、二十一日目に山が破れて鬼は退治されたと伝える。
原典より
昔、人びとは関村の下居堂から奈曽川にそって上り、小滝から蔵王権現を通り、栗山池から観音森をこえて、山形県飽海郡の落伏に下る道を通っていた。—— 日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。