遠別嶽の谷川で岩魚を飲んだ八郎
どんな伝承か
安家村のずっと山奥の方に、八郎太郎という若者が住んでいた。ある夏の日、太郎たち兄弟三人は山形村の遠別嶽の麓へマダ剝ぎに来て、一生けんめいに稼いでいた。昼になり、近くの谷川でべんとうを広げると、川に雑魚がたくさん泳いでいた。これはよいおかずだと捕って火にあぶり、塩や味噌をつけて食べたところ、そのうまさは格別で、三人は腹いっぱい食べた。昼寝のあと、太郎は急に水が飲みたくなって川に下り、両手で水をすくうと、手の中で赤い岩魚がぴちぴちと跳ねている。何度すくっても同じなので、とうとう堪えきれずに岩魚のまま水を飲んでしまった。水は口も溶けるほどうまく、すくっては飲むうちに、ますます喉が渇いていった。
原典より
<高木——「十和田湖」「蛇身の八郎」柳田 「小三郎池」>昔、あったじょうあ。—— 日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。