石薬師に癒された小町のかさ
どんな伝承か
出羽の郡司小野良実の娘小町は、和歌の才を買われて朝廷に仕えていたが、年を重ねたので父の任地へ帰ろうと旅に出た。途中で病み、体じゅうにかさができて旅を続けられなくなる。神仏に祈ると、上野国甘楽郡小幡谷の鏑川のほとりにある小野の石薬師が効くという夢のお告げがあった。小町は後賀の鏑川のそばで石薬師を拝み、近くに堂を建てて住み、願いが叶わないなら仏の名が惜しいと歌を詠んだ。すると薬師が夢に現れて返歌し、目覚めるとかさは跡形もなく消えていた。小町は礼に塩を供えてまた旅立ち、以後この塩薬師の鉱泉を沸かして入るとかさが治ると伝えられている。
原典より
むかし、小野良実が、出羽の郡司をしていた時、娘の小町は、和歌の才にすぐれていたため、朝廷に仕えていた。—— 日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。