雄の首を抱いた鴛鴦と猟師の出家
どんな伝承か
鎌倉時代のこと。二荒山神社の東を流れていた求食川は、岸に柳が茂って水鳥のよい住みかであった。八幡山一帯を猟場にしていた猟師が、一日歩いても兎一匹しとめられず家路につく途中、この川で仲むつまじく遊ぶ鴛鴦のつがいを見つけ、弓を引きしぼって雄を射落とした。驚いた雌はつれあいの羽の下へ入ろうとしたが、猟師に気づいてどこへともなく逃げ去った。猟師は首を切り落として雄を持ち帰る。翌日、同じ川岸に一羽の雌がうずくまっていて、たやすくしとめられた。抱き上げてみると、前の日に殺した雄の首を羽の下に抱いていた。鳥の情に打たれた猟師は殺生を悔いて頭を丸め、川岸に塚を築き石塔を立てて鴛鴦の菩提を弔ったという。
原典より
二荒山神社の東側を流れていた求食川は、川岸に柳が茂っていて水鳥たちのよい住まいでした。—— 日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。