椀二つで貸すのをやめた淵
どんな伝承か
天竜市小川の椀貸渕について伝えられている話である。淵のあたりには二軒の人家があった。婚礼や饗宴で膳椀が入用になると、人々は淵に臨んで明日は何人前を貸してほしいと願をかけた。翌朝行ってみると、頼んだだけの膳椀が必ず岩棚に出されていたという。あるとき返却の際に、あやまって椀を二つ手もとに残したままにした。するとその夜、淵は雷のように鳴り響き、水の中から紅い光を放った。竜神が怒ったのだといい、それきり頼んでも二度と貸してはくれなくなったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。