天の神の足跡が生んだ琵琶湖
どんな伝承か
大昔、近江という所には琵琶湖もなく、ふつうの土地であったという。そのあたりにいた人間はひどい怠け者ばかりで、一日中寝転んで何もせず、喧嘩をしたり人の食べ物を盗んだりしてばかりいた。それを見た天の大きな神が、なんと怠け者どもか、一度懲らしめてやらねばならぬと怒ると、あたりが急に暗くなり、空から柱のようなものがどんと落ちてきた。それは神の足であった。驚いて見ているうちに足はすうと天へ引き上げられ、そのあとに大きな足跡が残った。するとその足跡にどこからか水がざあざあと流れ込み、みるみるいっぱいになった。それが琵琶湖になったのだという。
原典より
〈高木―「羽黒山」 柳田―「大人の足跡」〉むかしむかし、ほんまになんにもあらへんような大昔にな、近江ちゅう所は、琵琶湖もなんにものうて、普通のとこやったんやて。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。