彦根明性寺の二百歳の古狸
どんな伝承か
近江国彦根の古寺、明性寺には、ひどく年を経た狸がいて、文化年間には寺で二百歳にもなる狸だといわれていた。当時の住職の宗厳は名の知れた詩人だったので、遠近から文人や客が訪れて泊まっていく者が絶えなかった。ところが泊まった客は、最初の夜にはきまって寝込みを襲われ、大声を上げてうなされる。次の夜にはうなされない代わりに寝室を荒らされ、ひどく手こずるのが決まりのようになっていたという。この寺には、のちに江戸の儒生が狸を捕らえようとした話も伝わる。
原典より
然るに宿る客は、第一夜に必ず狸に寝込みを襲はれて高聲に魘され、次の夜には魘されない代りに、寝室を荒らされて大に手古摺ることが常例になつて居た。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。