垣根の上に現れた寺沢の姿
どんな伝承か
維新前、彦根藩士に寺沢友雄という人がいた。ある夜、同じ藩の侍が寺沢の屋敷の外を通ると、垣根の上に半身を出してあたりを見回している人影がある。月明かりで見ると屋敷の主人の寺沢だった。主人は病のため帰らぬはずなので不審に思い、翌朝屋敷を訪ねると、家の者も同じ時刻に主人の姿が池の上に映るのを見たという。やがて彦根から急ぎの知らせが届き、主人はまさにその時刻に熱病で亡くなっていたことが分かった。
原典より
垣の上に半身を現はし、前後を見廻してゐる人を認め、月の光に照してみれば、其家の主人である。—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が編んだ幽霊譚と幽霊論の集成で、昭和十三年に文明社から出た。新聞・雑誌の記事や井上円了・柳田國男・高峰博らの所説、古典の文を出典を添えて引き、葬送の習俗や布哇の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜による説明、乃木大将が見た我が子の幽霊などの実話を集める。三篇に分かれ、第二篇は男女の幽霊・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・前知らせなど八項、第三篇は幽霊写真・化物屋敷・霊界通信を扱い、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。