江戸で死んだ彦根藩士の生霊
どんな伝承か
維新前、彦根藩士の寺沢友雄がある夜、同藩士某の邸の垣根のそばに人が立っているのを見た。月明かりでよく見るとその邸の主人某その人だったが、当時某は江戸詰めでここにいるはずがなかった。翌日訪ねて話すと、某の夫人も同じ時刻に良人の影が障子に映るのをはっきり見たといい、二人とも驚いた。その翌日、江戸から某が熱病で急死したとの急報が届き、時日が二人の見た幻影と一致していたという。
原典より
そこで、月の光に照らしその顔をじっと見つめると、どうやらその邸の主人某にちがいなかった。—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。