斧を磨いて針にする老婆と磨針峠
どんな伝承か
京で学んでいた一人の学者が、怠け心から学問を投げ出し、帰る道すがらこの峠に差しかかった。そこで老婆が大きな斧を懸命に石へこすりつけているのに出会い、何をしているのかと尋ねると、斧を磨りつぶして針にするのだと答えた。学者は己の辛抱のなさを恥じ、京へ引き返して学業を成し遂げたという。後年ふたたびここを訪れた学者は、斧さえ磨けば針になるものをと歌に詠み、峠を磨針峠と名づけて、記念の杉を植え神霊を祀った。これが磨針明神で、杉は大樹となって今も残る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。