安八大夫の娘と夜叉ヶ池の夫婦
どんな伝承か
二百五十年ほど前、近江から美濃の安八郡へ移った者が身代を築いた。神戸の八継村で安八大夫と呼ばれた大百姓で、一刈り八町の田を持っていたという。ひどい日照りの年、田を見に行くと小さな蛇がいたので、水を入れてくれたら娘二人のどちらかを嫁にやろうと声をかけた。翌日には自分の田にだけ水が満ちており、蛇は立派な侍に姿を変えて娘を迎えに来る。やむなく姉を出そうとしたところ、妹のほうが自分が行くと申し出て家を出た。行き先は揖斐川の奥、三県境の夜叉ヶ池であった。夫婦は年に一度里へ戻って座敷に泊まり、寝姿は見るなと言う。こっそりのぞくと二匹とも蛇の姿で寝ていた。驚いた家では、もう帰るなということになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。