名刀紫丸を取り返した恩返しの狼
どんな伝承か
川東から三谷に入る所に滝ときれいな藤棚がある。藤を見物に寺田掃部の奥さんが腰元らを連れて行くと、途中で猪の落とし穴に狼がかかっていた。かわいそうに思った奥さんは穴を埋めて助けてやり、狼は喜んで山へ逃げた。その後、奥さんは病気をして死んだ。ところが奥さんは生きている。掃部も不思議に思ったが、手の行き届くように世話をしてくれるのでそのままにしていた。この家には紫丸という名刀があり、家中の者がこれを盗んで八鹿の方へ逃げた。奥さんに化けていた狼は仲間の狼に取り返すよう頼み、狼たちは盗人を追った。盗人は木に登って逃れようとしたが、千匹狼はたきつぎになって登ってきた。あと少しで届かぬところで「早よ、宿南に行って、宿南の掃部呼んで来い」と言った。こうして名刀を取り戻すことができた。狼の化けた奥さんは命を助けられた一部始終を寺田掃部に話し、山へ帰って行ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。