道観長者を歌う一の井の手まり歌
どんな伝承か
一の井には道観長者を歌い込んだ手まり歌が伝わる。熊野の寺を建てたのは道観長者の弟息子だと歌い出し、十二歳の子が黄金の靴を履き、槍を持たせた従者を連れて栗毛の馬にまたがり、母の病を神に祈って熊野へ詣でる姿を描く。かたびらの袖から水がつき、小袖を流したという小満の名も見える。後鳥羽院の昔、文治のころから二月堂を建てるまでを歌い、母の病のために住みなれた一の井を後にして八幡山の奥へ落ちてゆく哀れさ、栄華の夢が覚めたのち功徳を悟って宝を投じたことが続く。終わりは、松明をかついで水取行事に参るさまで結ばれる。
原典より
弟は良い子じゃきれいな子じゃきれいに育てたお子じゃもの足に黄金の靴はいて 従者に二本の槍持たせ栗毛の駒にまたがりて向かい通りゃる道者衆は熊野道者の行列よ 母の悩みを神にかけ背中に掛けたるかたびらの肩と袖とは梅の枝—— 日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。