花田へ帰りたいと泣いた金岡の樟
どんな伝承か
須牟地曾根神社はもと住吉郡南花田、今の堺市南花田町にあった古い社で、勝手明神とも呼ばれていた。明治四十年ごろ金岡神社へ合祀されると、不思議なことが起こるようになった。毎夜のように本殿前の大きな樟の梢から泣き声が聞こえ、耳を澄ますと花田へ帰りたいと言っているようであった。初めは気味悪がって近寄らなかったが、年月がたつうちに、この夜泣きの樟に祈ると子どもの夜泣きが治ると言われ、真夜中に子を抱いて樟の下に立つ者が現れた。泣き声の主は移ってきた勝手明神だとも、その眷族の白蛇だとも言われる。声を聞いた古老は、鋸の刃を擦るような音だったと語っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。