使者を随神にした備後一宮
どんな伝承か
神無月には全国の神々が出雲大社に集まるのに、備後一宮様だけが来ていない。出雲の神がたずねると、忙しくて行けないという返事であった。いつでもよいからと言っても、一年中忙しいという。それなら見に行くというので、一宮様は十月の大祭の日を一番暇な日だと教えた。出雲の使者が来てみると、市が立ち、大勢の参拝者で忙しくしている。一宮様は使者をもてなし、きれいな女をつけて女におぼれさせ、出雲へは帰らせず、「一年中忙しくてそちらには行けない」という手紙を出させた。使者はそのまま一宮様の随神になり、今でも一宮様は出雲へは行かないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。