焰硝の人形を呑んで裂けた大蛇
どんな伝承か
府中の本村から金丸へ越える道の傍ら、山頂の広く平らな地に大小七つの池がある。山の上でありながら常に水を満々とたたえ、藩内一の水利で景色もよい。昔この池に大蛇が棲み、品治郡安井の柏の山にも大蛇がいて雌雄をなしていたため、互いに通っては近隣に大きな害をなした。柏の大蛇は勇武の者に討たれ、その跡を蛇切が峠と呼ぶ。残る大蛇は山腹の岩屋寺の僧を幾度も夜のうちに連れ去った。人々は大きな人形の腹に焰硝を詰め、衣を着せて僧が寝ているように装う。大蛇は人形を丸呑みにして帰ったが、火が焰硝に移って胴腹が裂け、のたうって死んだ。池の頭の広野は赤い地となって草木が焦げ、その跡を蛇摺と呼ぶ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第10巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全85話(岡山・広島・山口=中国地方)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。