稲が葦に変わった湖山池の起こり
どんな伝承か
今は昔、気高郡に湖山長者という名高い金持ちがあった。ある年の夏、田植えの時分になると、家の者も近在の者も身仕度をして田に出た。長者は家から見渡しきれないほど広い田を眺め、ひそかに己の富と力を誇っていた。夕方になっても田植えは果てしなく、とうとう日が暮れかけたので、長者は金の団扇を開いて日に向かい三度招いた。すると山の端に沈もうとしていた日が三段ばかり上ってきて、田植えは残らず済んだ。ところが夜が明けてみると、広かった田は跡形もなく、ただ広々とした湖水が広がり、植えた稲は池の端で葦となって揺れていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。