粟島の穴に入定した八百ベクサン
どんな伝承か
米子の粟島に、食いしんぼうで知られる十八の娘がいた。舟乗りの父が龍宮講の宿へ招かれ、台所をのぞくと人魚が調理されている。恐ろしくなった父は箸をつけず、捨てる場所にも困って料理を持ち帰り、家の者に相談するまでと戸棚へしまい込んだ。土産を探した娘はそれを見つけ、人魚とも知らずひとりで平らげてしまう。以来、娘は少しも年を取らず十八のままで、やがて年齢は八百に達し、知る者は一人もいなくなった。娘は米を携えて粟島の穴に入り、そこで定に入ったと伝わる。西伯郡彦名村にある穴が、その跡だという。
原典より
<柳田——「比丘尼谷」>粟島のある舟のりの家に、十八になるズイの悪い(食いしんぼうの)娘がいた。—— 日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。