口ゆえに父を失った物言わぬ娘
どんな伝承か
長柄川にかかった橋は毎年の大水で流れ落ちてしまう。ある分限者の旦那が、橋の根に人柱を入れなければ橋はもたないと言ったところ、誰も人柱になる者がなく、言い出した者が立つべきだということになって、その旦那自身が橋桁の下に生き埋めにされた。それ以来、旦那の娘はものを言わなくなる。やがて駕籠で嫁に行くとき、雉がケンケンと鳴いたために猟師に撃たれるのを見て、口ゆえに父は長柄の橋柱、雉も鳴かねば撃たれざらまし、と歌を口にし、それから後はものを言うようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。