大般若経でわろう渕の蛇を追った巫女
どんな伝承か
幡多郡十和村の川口の今成にわろう渕という淵がある。昔この集落に巫女が住み、美しい娘がいた。娘が畑へ綿を取りに行く途中で淵のほとりを通ると、水に映った姿が淵に住む蛇の目にとまり、蛇は娘を引きずり込んだ。怒った母は六月土用にもかかわらず淵に氷を張らせ、蛇の嫌う鉄の下駄で渡ったが蛇は出なかった。そこで小野の願成寺から大般若経の半分を持ち出して淵に投げ込むと、蛇はついに追い出された。東のはし神社へ逃げたが渡れず、江川崎から愛媛へ下り、片目天神で天神のてんじに追われ、再び川を遡って十川の上流で七日七晩焼けて死んだという。白滝まで逃げたとする伝えもある。
原典より
<柳田―「蛇ヶ渕」>川口の今成にわろう渕という渕がある。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。