大蛇となって山川を光らせた戸波の太刀
どんな伝承か
天正十八年四月、豊臣氏と小田原北条氏の合戦のとき、宮根の権現堂に籠めてあった太刀を小松次郎衛門という者が乱暴に奪って持ち歩いた。長旅の疲れか一足も進めなくなり、吾川郡波川の渡のそばで休んで戸波へ帰城すると、鞘だけあって刀身が無い。翌朝休んだ所へ行くと、太刀は大蛇となって往来を妨げ、あたりの山川を光らせていた。次郎衛門が礼拝すると太刀は自ら鞘に納まった。城代の指図で琴弾八幡宮へ寄進され宝樹院の別当が預かったが、後に善福寺へ渡ると寺中が雷のように鳴動し、太刀は鞘から抜け出て畳や障子を突き破った。桑の大木の空に上げても抜け出て光を飛ばすので、再び寺へ遷して本尊の上の座に納めたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。