餅搗きの夜に介錯された七人の落人
どんな伝承か
昔、大豊町北川に独り暮らしの老婆がいた。ある年の暮れ、村の若い衆を雇って正月の餅を搗いていると、飢えと疲れで弱り切った七人の落人が庭に転がり込んで倒れた。老婆たちは谷の水と餅で介抱したが、七人は食べる力もなく、首のあたりを叩いて介錯を望んだ。老婆は追手に捕らわれて恥をかくよりはと決心し、最後の一臼を搗き終えてから若い衆に命じ、菜刀で一人ずつ喉を断って自害を助けた。首領格の落人は死に際に七人の刀を家の記念にと託した。亡骸は鍛冶屋の畑に大穴を掘って一つに葬られ、七人塚と呼ばれて命日ごとに祀られた。塚は近年まで畑中に残り、七本の刀は鍛冶屋の杉本家の土蔵に伝えられ、十二月の餅搗きに男が餅を供えて祭ったという。
原典より
<高木 「七盥山」柳田―「七人塚」>昔、ここに独り者の老婆が住んでいて、ある年の暮のこと、村の若い衆を雇って、正月の餅を搗いていると、そこへ長い旅路の果てであったでしょう、飢餓と心労にやつれはてた七人の落人が背負い背負わ…—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。