木の精の夢告から起こった天神中条
どんな伝承か
その昔、孝謙天皇が奈良田へ流されたとき、九十余人の従者とともにたまたまこの地へ立ち寄った。川のほとりの大きな欅のもとに仮の御殿をこしらえ、天満具足殿を移して一夜を明かしたところ、天皇の夢に木の精が現れ、われこそは天神である、これより山に引きこもると告げて消え失せた。不思議な夢だと思われた天皇はここに天神を祀り、あわせてこの地を天神中条と名づけられたという。のちに新羅三郎義光が国を見回った折、天神のいわれを土地の者に尋ねてこの話を聞き、孝謙天皇の神徳にあやかって一族を守ってほしいと願い、三町四方の地を寄進したと伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。