子どもの謎に首をかしげた西行峠
どんな伝承か
西行法師が甲斐路に入り、この峠で辺りの景色を眺め、遥かに富士の霊峰を拝んで、足もとを行く帆かけ舟に心を寄せながら詩想を練っていた。そこへ十二、三歳ほどの男の子が鎌を持って登ってきた。西行が気安く、何を採りに来たのかと尋ねると、子どもは即座に、冬青くて夏枯れる草を刈りに来たのだと答えた。夏枯れの草とは何かと、さすがの西行も笑って首をかしげたという。年端もいかぬ子の返答に旅路の容易でないことを知り、西行は姿を消したと伝える。峠には子どもの病に霊験があるという観世音がまつられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。