富士を背負った大太郎法師と鹿沼
どんな伝承か
大昔、でいらぼっち(大太郎法師)という大きな者が、富士山を背負って西から東国へ旅していた。相模国まで来たころには疲れ、腰掛けにちょうどよい高さの大山を見つけて腰をおろし、富士を後ろへおろして休み、長い腕で相模川の水をすくって何杯も飲んだ。立ち上がろうとすると富士は根が生えたように動かず、力を込めた両足は大地へめり込み、背負い縄は切れてしまった。代わりの藤づるを探したが相模原の台地には一本もなく、ついに富士を置いて旅を続けた。両足の凹地は池沼となり、淵野辺駅の近くの鹿沼としょうぶ沼になったという。それ以来この台地に藤づるは生えない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。