釜の蓋に乗って消えた蛇の嫁
どんな伝承か
釜無川の下流、西岸の浅原村に親子三人の一家があった。ある夏の夕立の中へ、濡れそぼった巡礼の娘が雨宿りを乞うて飛び込んでくる。一家が親切にしたので娘は居ついて働き、やがて息子の浅吉と夫婦になった。二、三年たったある夜、行燈の火で髪をすく妻の影が障子に映ったが、それは人の女の姿ではなかった。恐ろしくなった一家が暇をとらせると、妻は暴風雨の日に台所の釜の蓋をもらい受け、濁流へ投げ入れてその上へ飛び乗り、蛇身と化して消えた。以来水害はやみ、沿岸の者は釜を使わず、川を釜無川と呼ぶようになったと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。