旅僧の杖から湧いた吉池温泉
どんな伝承か
いまの富士吉田の吉池温泉のあたりに、昔、旅の僧が行き暮れて一夜の宿を乞うた。その家の老夫婦は情け深く、僧を大切にもてなした。翌朝、出立にあたって僧が礼をしたいが何がよいかと尋ねたので、老夫婦は水が不便で困っていると答えた。僧は庭に自分の杖を突き刺し、ここから水が湧くから大切に使うようにと言い残して去った。実際に水が湧いたので、自分たちだけで使うのはもったいないと風呂を沸かして近所の人を入れたところ、神経痛や肩こり、胃腸病によく効くと評判になり、温泉を始めることになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。