毒消し銀杏になった日蓮の杖
どんな伝承か
身延町下山の上沢寺に、六抱えもある銀杏の大木が立つ。六百年ほど前、日蓮が身延へ入った頃のことという。穂積村小室山の善智法師は日蓮と法論をして敗れたのを恨み、弟子に命じて日蓮を上沢寺へ招き、毒を入れた萩餅を出した。日蓮が庭で遊ぶ白い犬に餅を一つ投げ与えると、犬は一口食べただけで黒い血を吐いて死んだ。両僧は非を悔いて宗旨を改め、日蓮の弟子となった。日蓮は身代わりに死んだ犬を憐れんで境内に葬り、その上へ銀杏の杖を突き立てた。杖は根を生じて育ち、枝が下を向くことから逆さ銀杏、また毒消し銀杏と呼ばれる。触れるだけで身の毒が消えるといい、梵字を書いた葉と実は毒消しや安産の護符として寺で売られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。