藤蔓の筆で書かれた本照寺の藤曼陀羅
どんな伝承か
韮崎市竜岡町下条東割の岡の上に、日蓮宗の本照寺がある。日蓮上人が佐渡へ流される途中この地で大暴風雨に遭い、一本の桜の蔭に身を寄せたが、雨は激しさを増して衣を濡らすばかりだった。上人が目を閉じて経文を唱えていると、一人の老婆が現れ、笹の葉に萩の餅を包んで差し出した。上人は押しいただき、松にからむ藤蔓を引き切って筆の代わりとし、紙に題目を書いて老婆に与え、信心に励むよう説いて雨の小止みに出立したという。のち弟子の日興が佐渡への往復の途中で師の遺跡を訪ね、本門寺の住職となってから徒弟の日順にこの寺を建てさせた。そのときの題目は藤曼陀羅として寺の宝物に伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。