日蓮が渇きをいやした横根の桜清水
どんな伝承か
身延町の横根に、桜清水の霊場と呼ばれるところがある。もとここでは真言宗の実教阿闍梨が秘密の法力を修め、国家の安寧を祈っていた。文永十一年、日蓮聖人が鎌倉から身延山へ入る途中この地で休み、居合わせた老婦に水を乞うて渇きをいやした。聖人はその水を天の甘露にもまさるとたたえ、手に結ぶ水の流れの久しきは妙の御法の縁なるらめ、と一首を詠んだという。そして携えていた桜の杖を泉のほとりへさし込んで立ち去った。杖はのちに芽を生じて枝を茂らせ、これを不思議に思った実教阿闍梨は日蓮宗に改宗し、寺号も玉林山実教寺と改めたと伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。