井堰に沈んだお鶴と市太郎
どんな伝承か
沖代平野は水の便が悪く、山国川に築いた堰は洪水のたびに壊れていた。保延元年、七人の地頭が集まって人柱を立てることに決め、袴を川に流して最初に沈んだ湯屋弾正が立つことになる。ところが弾正の家来の娘である鶴が身代わりを願い出、十三歳の子市太郎も母とともに立つと言い張った。八月十五日、白無垢の母子は輿で川の中ほどへ運ばれ、静かに水へ入ったという。二人が沈むと金色の鳩が二羽現れ、宇佐八幡宮をさして飛び去った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(山中耕作・宮地武彦(執筆・整理)/荒木博之(解説)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第13巻――北九州(福岡・大分・佐賀・長崎)』は、福岡・大分を山中耕作、佐賀・長崎を宮地武彦が執筆・整理し、荒木博之が解説を担った伝説資料集の一巻である。姫島、うつぼ舟、百合若大臣、黒髪山の大蛇退治、平家谷、炭焼小五郎、河童、白米城など、北九州四県に伝わる伝説を題目ごとに収める。各題目は口承を重んじて選んだ例話を冒頭に据え、県別の類話を梗概にして伝承地と出典名を添え、近世以後の史料を文献として抜き出す編み方をとる。