竜宮界と伝える開聞宮と大宮姫
どんな伝承か
開聞宮は大昔の竜宮界であり、景行天皇二十年の十月三日に一夜のうちに湧き出たという。彦火火出見尊が豊玉姫に会ったのもこの地だという。崇山の窟で神仙の塩土翁が水を汲んで修行していると、朝日の光が水に映るとき麋鹿が来てその清水をなめ、身ごもって口から美しい姫を産んだ。神仙は幽庵で育てて智通・智達に与え、産名を瑞照姫と号した。姫は二歳で京に上り鎌倉大臣が養い、天智天皇元年に十三歳で后となって大宮姫と号した。のちに大友皇子と宮女たちが正月二十一日に雪打ちを企てたので、姫は生国へ帰ろうと志賀を発ち、伊勢の阿濃津から船出した。六月朔日に山川の内の牟瀬の浜へ着き、開聞嶽の麓に仮殿を造って入られたと記す。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。